幼稚舎の卒業生は、中学に上がるときに進学先を選びます。主に、普通部か中等部か。重松さんの代は「普通部がメジャーだった」そうですが、家庭には別の理由もありました。
「普通部でやれれば、塾高で困らない」。普通部の理科の授業範囲が塾高の理科をほぼ網羅していて、普通部で落ちなければ塾高でも落ちない。親はそう読んでいた、と重松さんは言います。
内部進学の話に「落ちる」という言葉が出てくることを、意外に感じる方もいるかもしれません。一貫校は受験がないから楽、という見方とは違う一面が、この読みの背景にあります。
連載第3回は、幼稚舎の家庭が普通部を選んだ理由と、普通部の授業の中身を聞きます。
話し手:重松さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
当時は、普通部が「メジャー」だった
インタビュアー: 幼稚舎から上がるとき、普通部を選んだのはどうしてですか?
重松さん: 当時は、それがいちばんメジャーだったんです。幼稚舎から普通部、そして塾高、という流れが王道で。
インタビュアー: それだけですか?
重松さん: 親の目線でいうと、もう一つあります。普通部に行くと、塾高がすごく楽なんです。
普通部の理科は、塾高の理科をほぼ網羅している
インタビュアー: 楽、というのは?
重松さん: 普通部の理科の範囲が、塾高の理科の範囲をほぼ網羅しているんです。だから、普通部で落ちなければ、塾高でも落ちない。親としては、塾高まで無事にサバイブしてほしいという気持ちで、普通部に入れたかったんだと思います。
インタビュアー: 幼稚舎から普通部、塾高が王道ルートだとは聞いていましたが、そういう理由は初めて聞きました。
重松さん: 理科だけじゃなくて、歴史も強いですね。普通部の先生は本当に教科のエキスパートで、教えるのがめちゃくちゃうまいんです。各科目で。
塾高でも通用した、普通部の国語、理科、社会
インタビュアー: 普通部の授業のクオリティは、実際どうでしたか?
重松さん: 国語、理科、社会、特に歴史については、本当に質が高くて、塾高でも全然通用した記憶があります。英語はちょっと、なんとも言えないですけど(笑)。
インタビュアー: 中学の勉強としては、難しい方ですか?
重松さん: 難しいです。勉強は重いですね。労作展も大変ですし。
インタビュアー: 労作展は、別の卒業生からも「あれは大変そうだ」と聞きました。
重松さん: それくらいちゃんとやります。部活はバスケ部で、週3、4回くらい。楽しくやれていましたけど、勉強と合わせるとけっこうきつかったですね。
内部進学でも、進級は自動ではない
インタビュアー: 「塾高で落ちる」という話がありましたが、実際にあるんですか?
重松さん: あります。塾高は1学年700人くらいいて、感覚としては各クラスに1人か2人、留年する子がいます。普通部でも落ちる子はいます。
インタビュアー: 中学で留年があるというのは、驚きました。
重松さん: なので、親の読みは当たっていたと思います。普通部でちゃんとやっていたので、塾高では楽でした。英語はちょっと怪しいんですけど、それ以外は普通部の貯金で助かった、という感覚です。
男子校であることは、気にならなかった
インタビュアー: 普通部は男子校です。女子がいる方がいいな、とは思わなかったですか?
重松さん: 小学生に、その迷いはないですね(笑)。入ってからも、周りにいないのが当たり前になるので、それが普通になります。その迷いって、入る前にしか生まれないものなんだと思います。
PenBridge編集部より
重松さんの家庭が普通部を選んだ理由は、校風でも通いやすさでもなく、塾高までの学力の連続性でした。普通部の理科が塾高の範囲をほぼ網羅している、という親の読みです。
この読みは、中学受験で普通部を目指す家庭にとっても参考になります。国語、理科、社会で学んだことが塾高でもそのまま通用した、という重松さんの実感は、普通部の3年間が本人にとって、受験のない休息期間ではなく、高校以降に効いてくる貯金を作る時間だったことを示しています。
一方で、留年という言葉が中学と高校の両方で出てきたことは、そのまま受け止めておきたい点です。重松さんの話では、進級と進学のたびに学業が見られ、幼稚舎から来た子も、受験で入った子も、同じように評価されていました。人数の感覚は本人の記憶によるものですが、内部進学が入学した瞬間に大学まで決まるものではない、という点は本人の経験として一貫しています。
だからこそ、普通部の授業についていける学力を受験勉強の中で作っておくことが、入学後の安心につながると私たちは考えています。
