記事一覧へ戻る
進路・就活・インターン

「アマチュアスポーツは、これが最後」。ウェイトリフティング部への転向と、投資銀行を目指す就職活動

バスケ部からウェイトリフティング部への転向、投資銀行を目指す理由、そして幼稚舎以来受験をせずに大学まで来た本人が感じている「一貫校で身についた力」を、重松さんに聞きます。

2026.09.02経済学部
銀杏の木々に囲まれた明るい校舎へ、バスケットボールを持った学生が歩く淡い水彩風イラスト

バスケットボールを小学5年から10年近く続けてきた人が、大学の途中で競技を変えました。ウェイトリフティングです。周りは当然、驚きます。本人には責任のある立場もありました。それでも部員全員と先輩全員に話し、承認をもらって転向しました。

理由を聞くと、「アマチュアスポーツは、これが最後じゃないですか」という答えが返ってきました。大人になれば、上司や顧客からどう見られるかを気にしないといけない。自分の体力だけで限界に挑戦できるのは、今しかない。

その重松さんは今、投資銀行を目指して就職活動をしています。激務で知られる業界です。話を聞いていくと、この選択と、内部生についての本人の持論が、一本の線でつながりました。

連載最終回は、大学での転向と就職活動、そして幼稚舎の入試以来ひとつも受験を経ずに大学まで来た人が考える、一貫校で身についた力の話です。

話し手:重松さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge

バスケ部から、ウェイトリフティング部へ

インタビュアー: 大学でもバスケ部に入って、途中でウェイトリフティング部に変わりましたよね。何がきっかけだったんですか?

重松さん: シンプルに、挑戦したいというのが最初の一歩です。あとは、バスケ部での僕のポジションを後輩に譲れるとか、副次的な効果もいろいろあって。最終的に、みんなからOKをもらって移りました。

インタビュアー: OKをもらわないといけない立場だった。

重松さん: さすがに立場がありましたし、責任もぼちぼちある立場だったので。やりたいだけでは許されない状態でした。部員全員と話して、先輩も全員と話して。

「アマチュアスポーツは、これが最後」

インタビュアー: 何と説明したんですか?

重松さん: アマチュアスポーツは、これが最後じゃないですか、と。大人になったら、他人からの評価とか、上司や顧客からどう見られるかを気にしないといけない。そういうことをマジで気にせずに、自分の体力だけで限界に挑戦できるのは、けっこう最後かなと思っていて。それをやってみたい、という話をしました。

インタビュアー: 転向してから、生活は変わりましたか?

重松さん: バスケ部時代は本当に部活しかしていなかったんですけど、ウェイトリフティングは24時間やっても強くなるものではないので、毎日2時間半トレーニングに集中して、それ以外は自由に使えるんです。インターンを一つやって、アルバイトもして、就活もして、という感じです。

投資銀行を目指す理由は、最初はミーハーだった

インタビュアー: 就活は、投資銀行を目指しているんですよね。激務で有名ですが。

重松さん: めっちゃ激務です。本音ベースで言うと、最初は普通にミーハーで、めちゃくちゃかっこいいなと思ったのと、給与の水準が他の新卒とは次元が違う、というところで興味が生まれました。大学2年の夏から秋くらいです。

インタビュアー: 入口はミーハーで、そこから?

重松さん: M&Aのインターンに行ってみて、M&Aって何なんだ、というところから。ゼミもM&Aを扱うところに入って、バリュエーションとか、企業の価値はどうやって決まるのか、と考えていくうちに、けっこう面白いなと思うようになって。今はそれが強くなっています。

インタビュアー: 週11回の部活を乗り越えてきた体力は、武器になりそうですね。

重松さん: マジで大事だと思います。体力が理由で選択肢から外れることはないので。あらゆる生き方が楽しみですね。

インタビュアー: 周りに、そういう志望の人が多いわけではない?

重松さん: 逆に、僕が周りに影響を与えている方だと思います。

「内部生は就活をミスらない」という持論

インタビュアー: 慶應の内部生は、就活をちゃっかりしっかりやる、という印象が僕にはあります。内部の仲のいい同士で情報を共有して、みんなうまくいっている。

重松さん: 内部生は、そこはあまりミスらないんですよね。うまくやるんです。自分のメリットがどこにあるか、今頑張ると何がもらえるか、という損得の感覚がはっきりしているので。

インタビュアー: それはどこから来るんでしょう。受験から解放されて余裕が生まれるのか。

重松さん: 受験は、個人戦の要素が強いと思うんです。自分がどれだけ勉強して、自分がテストで何点取れるかの勝負じゃないですか。内部生はそういうわけではなくて、もちろん留年してはいけないんですけど、それ以上に、大学まで付き合っていく奴らとうまくやらなくちゃいけない。そこで、政治ではないですけど、自分にはどういう価値があるのか、何ができるのかを、なんとなく裸で知っているんです。それが大学までうまくいくイメージですね。

インタビュアー: 受験は、他人と競って自分が勝ち残る競技で、自分に集中する。内部生は、仲間の中で自分の位置を知る。

重松さん: そうですね。医学部の内部進学だけは、ちょっと別ですけど(笑)。

PenBridge編集部より

この連載は、幼稚舎の入試の記憶から始まりました。最終回で重松さんが語ったのは、自分に何ができて、周りの中でどういう価値があるのかを、仲間との付き合いの中で知ってきた、という実感です。それが慶應の内部生全体に当てはまるかどうかは、この取材からは言えません。言えるのは、幼稚舎以来受験を経ずに大学まで来た一人が、自分の力の源をそこに見ている、ということです。

受験は個人戦で、内部進学は仲間との関係の中で進む。この整理は本人のもので、そのまま一般化はできませんが、中学受験や高校受験を経て慶應の一貫校に入る家庭が、入学後の姿を想像する手がかりにはなります。合格したあとの6年間、10年間は、同じ仲間と大学まで付き合っていく時間です。

ウェイトリフティングへの転向も、投資銀行という選択も、重松さんは自分の体力と価値を測ったうえで決めています。部員全員に話して承認をもらう手続きを、面倒だと言わなかったところに、この人らしさが出ています。

慶應の一貫校は、受験がないから楽な場所ではなかった、というのが8回を通した重松さんの話でした。受験の代わりに、やり切ることと、仲間とうまくやることが問われていた。それが、この連載から見える、入学後の生活の一つの姿です。

連載記事

重松さんインタビュー

1

「ペーパーテストは、なかったんです」。幼稚舎から慶應に入った重松さんが、かろうじて覚えている小学校受験

本人の記憶では、ペーパーテストのなかった入試で、何が見られていたのか。幼稚舎から慶應に入った重松さんに、粘土と絵、「待つ」テスト、子どもだけで受ける面接の記憶を聞きます。

読む
2

縄跳び3時間、プールで1キロ、山にも登る。「運動第一主義」の幼稚舎で過ごした6年間

縄跳びの連続記録、プールで泳ぐ1キロ、登山と遠泳。運動が第一の幼稚舎で、苦手だった重松さんはどう6年間を過ごしたのか。6年間変わらない担任と、36人のクラスの話も聞きます。

読む
3

「普通部でやれれば、塾高で困らない」。幼稚舎の家庭が普通部を選んだ理由と、教科のエキスパートの授業

幼稚舎の卒業生は、中学に上がるときに進学先を選びます。重松さんの家庭が普通部を選んだ理由、教科のエキスパートによる授業、内部進学でも進級が自動ではない現実を聞きます。

読む
4

「今いちばん仲がいいのは、普通部の仲間」。スマホ禁止の休み時間と、幼稚舎組と受験組が混ざる普通部の人間関係

幼稚舎組は3〜4割。受験で入った子との間に壁はあるのか。スマホ禁止の休み時間、今もいちばん仲がいい普通部のバスケ部の仲間、幼稚舎からの友達との距離を聞きます。

読む
5

週11回の練習、朝6時半の日吉。「引退まで自我がなかった」塾高バスケ部の3年間と、勉強の回し方

朝練は日曜も含めて毎日、週11回の練習。塾高バスケ部に打ち込んだ重松さんは、勉強をどう回していたのか。過去問のやりくり、先生による違い、普通部の貯金の三つを聞きます。

読む
6

高校で受けた「法律入門」がつまらなくて、経済学部に決めた。塾高で経験した文理選択と学部選択

高2で文理を選び、学部は3年間の成績を中心に決まる。塾高で受けられる大学の入門授業で法学部をやめて経済学部を選んだ経緯と、大学数学の先取りが大学1年を救った話を聞きます。

読む
7

順位表はないのに、上位層は互いの位置を知っていた。医学部枠をめぐる「ステルス」と、重松さんの目に映った幼稚舎組の学力差

本人の記憶では、塾高から医学部に進めるのは学年の数%。順位が公表されない中で、上位層はどう互いを把握し、「ステルス」はなぜ怖かったのか。幼稚舎組の学力差が大きく見えた理由も、本人の体感として聞きます。

読む
8表示中

「アマチュアスポーツは、これが最後」。ウェイトリフティング部への転向と、投資銀行を目指す就職活動

バスケ部からウェイトリフティング部への転向、投資銀行を目指す理由、そして幼稚舎以来受験をせずに大学まで来た本人が感じている「一貫校で身についた力」を、重松さんに聞きます。

無料相談

受験の進め方を
ご家庭に合わせて一緒に考えます。

志望校の選び方や併願の組み方、今の学習で優先したいことなどを、現在の状況を伺いながら、30分ほどのオンライン相談で整理します。
記事を読んで気になったこと一つからでも、お気軽にご相談ください。