中学の部活選びは、入学前に想像していた通りにいくとは限りません。
慶應普通部に進んだ戸倉さん(仮名)は、中1でバスケットボール部に入部したものの、雰囲気が合わずに悩みます。そして中2から山岳部へ。結果的にこの選択が、大人になった今も続く「一生ものの趣味」につながりました。
部活を変えるという決断と、山岳部での3年間について聞きます。
話し手:戸倉さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
最初はバスケ部。でも、合わなかった
インタビュアー: 入学して最初は、何部に入ったんですか?
戸倉さん: バスケ部です。バスケがしたくて入ったんですが、いわゆる体育会系の上下関係が、自分には合わなくて。練習したいのに、コートは先輩が優先で、下級生はなかなかボールに触れない。「バスケがしたくて入ったのにな」と思ってしまって、だんだん気持ちが冷めていったんです。
インタビュアー: それで、部活を変えることにした。
戸倉さん: はい。先生にお願いして、中2から山岳部に移りました。部活を変える人はそんなに多くないですが、1クラスに1人くらいはいた印象です。めずらしいけれど、できないことではない、という感じですね。
山岳部の日常 — ランニングと、毎週土曜のクライミングジム
インタビュアー: 山岳部は、普段どんな活動をするんですか?
戸倉さん: 普段は日吉の学校の周りをランニングしています。それと、毎週土曜日は綱島のクライミングジムに通っていました。部でジムと年間契約をしているので、個人で通うよりずっと安く使えるんです。
インタビュアー: 中学生が毎週クライミングジムに通えるのは、恵まれた環境ですね。
戸倉さん: 今思うと、そうですね。ジムでのクライミングだけじゃなくて、実際に岩場に行くこともありました。
月1回の登山と、山頂で作る料理
インタビュアー: 山にはどのくらいの頻度で登るんですか?
戸倉さん: 月に1回くらい、奥多摩や丹沢まで行っていました。夏休みには、長野や山梨で2泊3日の合宿もあります。八ヶ岳に登ったこともありました。合宿のときは朝2時、3時に起きて出発するので、体力的にはなかなかハードです(笑)。
インタビュアー: 印象に残っている文化はありますか?
戸倉さん: 山頂で必ず料理を作るんですよ。山登りのたびに、ちゃんと調理をする。僕はそのメニューを考える担当でした(笑)。あとは、卒業した先輩が大学生になってからコーチとして来てくれたりして、縦のつながりもゆるやかにありました。
同期は3人。それでも、楽しかった
インタビュアー: 部員は多かったんですか?
戸倉さん: 僕たちの代は3人だけでした。でも、少人数だからこそ自由で、本当に楽しかったです。
インタビュアー: その経験は、今も生きていますか?
戸倉さん: めちゃくちゃ生きています。方向感覚と、山登りの体力はあの3年間で身につきました。それに、今でも知り合いとボルダリングに行くんですが、あのとき毎週やっていたクライミングがそのまま趣味として続いている感じです。
PenBridge編集部より
戸倉さんの部活の話で印象的なのは、「合わない環境から動く」という決断を中学1年生でできたことです。
最初に選んだ部活が合わないとき、我慢して続けるか、環境を変えるか。部活を変えることには心理的なハードルがありますが、戸倉さんの場合、思い切って移った先で、大人になっても続く趣味と体力という財産を得ました。合わない場所で気持ちをすり減らすより、合う場所を探し直す方が、得られるものは大きいことがあります。
また、山岳部のような少人数の部には、大所帯の運動部とは違う良さがあります。学年3人だからこその自由さ、活動そのものへの没頭、OBとのゆるやかなつながり。部活選びでは「人気があるか」「強いか」だけでなく、「その子が楽しく続けられそうか」という視点も大切です。
お子さんが部活について漏らす小さな違和感は、環境を見直すサインかもしれません。「一度入ったら最後まで」と決めつけずに、選択肢があることを親子で知っておくだけでも、学校生活はずいぶん楽になります。
