慶應義塾女子高等学校の卒業生は、原則として全員が慶應義塾大学へ推薦されます。推薦人数に枠が設けられている学部もあります(学校公式サイト「進路情報」)。高校受験で女子高に入ると、大学受験の代わりに、3年間をかけて自分の進む学部を考えることになります。
松尾さんは、大学で脳の勉強がしたいと思っていました。最初は薬学部を目指していましたが、3年生の1学期に、志望をSFCへ変えました。きっかけは、女子高の選択授業に来たSFCの先生でした。
最終回となる連載第8回は、女子高の授業と、松尾さんの学部選びの話です。
話し手:松尾さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
選択科目は、2年生から自分で組む
インタビュアー: 女子高での勉強は、難しかったですか?
松尾さん: 難易度で言えば、普通の高校と同じくらいじゃないですかね。入試問題ほどの難しさはまったくないです。
インタビュアー: 授業はどういう仕組みなんですか?
松尾さん: 多種多様な選択授業があって、時間割を自分で組めるんです。選択授業は2年生の1学期から始まって、その段階でいわゆる文理選択をします。数学や化学などの理系科目を取る人と取らない人で分かれるんです。
インタビュアー: 医学部を目指す人は?
松尾さん: 医学部を目指すなら理系科目を取らないといけないので、たとえば2年生の2学期に突然医学部に行きたいと思っても、理系科目を取り損ねていたら難しいんです。特定の授業を受けないと、医学部を志望する権利がないので。医学部は枠も少なくて、最大で5人と聞いていました。
インタビュアー: 1学年200人ほどで5人。上位の人たちは、その枠を目指してかなりがんばりそうですね。
松尾さん: はい。
脳の勉強がしたかった
インタビュアー: 松尾さんは、どの学部を考えていたんですか?
松尾さん: 最初は薬学部を目指していました。でも、3年生の1学期に、SFCにしようと思ったんです。
インタビュアー: 何がきっかけだったんですか?
松尾さん: 私は大学で脳の勉強がしたいと思っていました。医学部は自分の成績では厳しいので選択肢にはなくて、薬学部か理工学部でも脳の勉強ができると聞き、そこを目指していたんです。
SFCの先生が、代わる代わる授業に来る
松尾さん: そうしたら、SFCの先生が代わる代わる教えに来てくださる、という選択授業があって。
インタビュアー: なんですか、それは。
松尾さん: なんだそれ、ですよね(笑)。本当にいろいろな先生が来るんです。カエルを連れてきた先生もいました。その選択授業に、脳の研究をしているSFCの先生がいらっしゃって、SFCでも脳の勉強ができるとわかったんです。
インタビュアー: SFCで、ですか。
松尾さん: はい。しかも、薬学部も理工学部も、私の興味とは少し違っていたので。
興味とのずれに気づいて、すぐ変えた
インタビュアー: 違っていた、というのは?
松尾さん: 理工学部ほど、シナプスやニューロンといった細かいところまでは興味がないし、薬が脳にどう効くか、というのも少し違うと思っていたところでした。だから、SFCでマクロな視点での脳の勉強ができるとわかって、すぐに志望を変えました。
インタビュアー: それで、結果は?
松尾さん: 今、SFCでその先生の研究室に所属しているので、大成功ですね(笑)。
学部の人気は、年によって動く
インタビュアー: 女子高からSFCに行く人は、多いんですか?
松尾さん: 私たちの代だけ、なぜかSFCがめちゃくちゃ人気だったんです。それまでは、SFCは20人くらいしか枠がなくて、それでも定員割れするくらいだったんですけど、私たちの代は異例の人気で、枠が増えて。それでもほぼ埋まるほど人気でした。
インタビュアー: 枠が増えなかったら、希望者が枠からはみ出していた。
松尾さん: それまでの枠だったら、絶対にはみ出ていました。
PenBridge編集部より
女子高の教育課程では、2年次から選択科目が増え、3年次には慶應義塾大学の教員が担当する専門的な内容の授業を履修することもできます(学校公式サイト「教育課程」)。松尾さんが出会ったSFCの先生の授業も、本人の記憶では、そうした選択授業の一つでした。脳の勉強がしたい、でも医学部は難しい、という気持ちで薬学部や理工学部を考えていた松尾さんは、その授業で、自分の興味に近い研究ができる場所を見つけています。
学校が公表している2025年度卒業生の推薦数は、経済学部60名、法学部53名(法律学科26名・政治学科27名)、理工学部28名、商学部18名、環境情報学部6名、医学部5名、文学部5名、総合政策学部3名、薬学部2名でした(学校公式サイト「進路情報」)。松尾さんの代ではSFCの人気が高く、枠が増えたそうですが、学部ごとの人数は年によって変わります。
松尾さんの場合、高校受験の時点で学部まで決めていたわけではなく、女子高の3年間で出会ったものが進路を決めました。中3の12月に第一志望を女子高に変えた松尾さんは、高校3年生の1学期にもう一度、自分の行き先を選び直しました。そのきっかけになったのは、高校の授業の中で大学の先生の話を直接聞けたことでした。
8回にわたって話を聞いた松尾さんの言葉には、受験は宝くじだという率直さと、入ってからの3年間を同級生と楽しく過ごした実感の両方がありました。女子高を目指す受験生と保護者の方にとって、入試の先にある学校生活を想像する材料になればうれしいです。
