インタビューの途中で、松尾さんは「これは伝えたほうがいいかなと思っていたことなんですけど」と切り出しました。女子高の入試は、宝くじを引く感覚に近い、という話です。
受験生にとっては、元も子もない話に聞こえるかもしれません。けれども、聞いていくと、勉強しなくていいという意味ではありませんでした。勉強は当たる可能性を上げるためにするもので、だからこそ、できることは全部やっておく、という話です。松尾さん自身も、本番では「いいくじを引けた」と振り返ります。
連載第4回は、松尾さんがいちばん伝えたかった、女子高の入試と運の話です。
話し手:松尾さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
公立のトップ校とは比べられない
インタビュアー: 目指していた横浜翠嵐と比べると、女子高はどんな位置づけでしたか?
松尾さん: それぞれにかなり異なる内容の勉強が必要なので、簡単に比較することはできないんです。
インタビュアー: 求められるものが違いすぎる、と。じゃあ人によっては、翠嵐より女子高のほうが受かりやすい、ということもあるんでしょうか。
松尾さん: あると思います。これは伝えたほうがいいかなと思っていたことなんですけど……。
100%受かる状態にはなれない
松尾さん: 女子高は、100%受かるようになる、という状態が不可能なんです。結局、最後は運なんですよ。
インタビュアー: 運、ですか。
松尾さん: 女子高のテストは、本当に特色が強すぎて。宝くじを引く感覚なんです。勉強するというのは、宝くじが当たる可能性を上げることにすぎなくて、結局、引けるかどうかは運です。
判定がAでも落ちることがある
インタビュアー: 模試の判定とは、どういう関係になるんでしょう。
松尾さん: 合格の可能性がすごく低いと言われていた人でも、当日に出た問題との相性がすごくよければ受かる。逆に、AとかSの判定が出ていた人でも、当日落ちることがあり得る。家庭教師の先生が、長年の経験から「あり得ますよ」と言っていました。
インタビュアー: 先生は、それをどう伝えてくれたんですか?
松尾さん: 「今やっているのは、宝くじを当てる可能性を上げることだけです。どれだけ時間をかけても、これをやれば絶対に受かる、という状態にはなれません」と。
公立は網羅できる。女子高は作る先生の色が出る
インタビュアー: 公立の入試とは、そこが違う?
松尾さん: そうですね。公立だったら、出てくる問題や知識にわりと限界があるので、そこを網羅しちゃえば、受かるよね、くらいには思えます。
インタビュアー: 実力がそのまま出る。
松尾さん: でも女子高は、本当に先生の趣味で問題が作られているんじゃないかと思うくらいなので。勉強している子には元も子もない話ですけど、最終的には運です。
インタビュアー: 過去問を見ても、年によってかなり違う?
松尾さん: 全然違います。この年度だったら受かっていたのに、みたいなこともあると思います。
私の代は、いきなり問題構成が変わった
松尾さん: それと関係があるかはわかりませんけど、私の代は、コロナで授業や受験に影響があった最初の入試で。それまで英語にはリスニングがあったんですけど、私の代ではなかったんです。今どうなっているかはわかりませんが。
インタビュアー: 急に、ですか。
松尾さん: 急に、それまでと問題構成が変わったんです。数学も、それまでは大問1が難しめの計算問題だったのが、私の代では文章題でした。
インタビュアー: 本番で見て、びっくりしましたか?
松尾さん: 本当に驚きました。え、変わってる、と思いました。
「何もかも、私と相性が良すぎる問題構成だった」
インタビュアー: 振り返ってみて、松尾さんは「いいくじ」を引けた?
松尾さん: いいくじを引けました(笑)。私、国語がいちばん得意だったとお伝えしましたけど、古文と漢文には少しだけ苦手意識があったんです。けれど、私の代の国語には、古文と漢文がなかったんです。いつもは大問2が古文か漢文だったのに、私の代は、古文や漢文について解説した現代文でした。
インタビュアー: それはラッキーですね。
松尾さん: 超ラッキーです。しかも、数学の大問1。それまで過去問で出ていた計算問題は、全部ひらめきが必要だったんですよ。小問が4問くらいあって、傾向と対策をつかんでいたり、見たことがある問題だったりすれば解けますけど、見たことがないと、本番ひらめけるかどうか。それが文章題になったので、全然解けるんです。
インタビュアー: 文章題なら、国語が得意なのが生きる。
松尾さん: そうなんです。国語が得意だから解けたんです。何もかも、私と相性が良すぎる問題構成だったんです。英語以外は(笑)。
併願した早稲田本庄には落ちていた
松尾さん: 相性の話で言うと、私、早稲田本庄には落ちているんです。
インタビュアー: そうなんですか。手応えはどうでしたか?
松尾さん: 全然なくて、試験中も難しいと思っていました。もちろん実際に難しいんですけど、本当に相性なんだと思います。
PenBridge編集部より
「女子高の入試は宝くじ」というのは、松尾さんと、松尾さんを教えた家庭教師の先生の経験から出てきた言葉です。合否が抽選で決まる、という意味ではありません。出題に強い個性があり、年によって形式が変わることもあるので、どれだけ準備しても「絶対に受かる」状態にはなりません。だからこそ、勉強は当たる可能性を上げるためにする、という意味です。
松尾さんの記憶では、松尾さんの代の入試は、それまでと問題構成が違いました。英語にはリスニングがなく、数学の大問1は計算問題ではなく文章題で、国語では古文・漢文の代わりに、古文や漢文について解説した現代文が出ました。国語が得意で、古文・漢文には少し苦手意識があった松尾さんにとっては、追い風になる変化でした。同じ変化が、別の受験生にとっては向かい風になったかもしれません。出題の形式は年によって変わることがあるので、過去問の傾向だけに頼らず、最新の入試要項と過去問で確かめてください。
「判定がよくても落ちることがあり、判定が低くても受かることがある」という家庭教師の先生の言葉は、判定が伸び悩んでいる受験生にとって、あきらめなくていい理由にもなります。では、当たる可能性を上げるために、松尾さんは何をしたのか。それが、数学で20年分解いた過去問であり、国語の品詞分解問題でした。そして、手を付けなかった英語で、本番に苦しむことになります。その話は次回に聞きます。
