インターハイ団体優勝。文系で学年1位。経歴だけ並べれば、絵に描いたような文武両道です。
ところが本人に高校生活を聞くと、返ってくるのは時間の話ばかりでした。練習は実質週7。オフは3週間に1日で、その1日も授業のある月曜日。生活のすべてが、テニスの周りで回っていました。
それでも、成績は学年1位。気合いで乗り切ったのでないなら、何かを先に決めていたはずです。連載第3回は、強豪校での3年間と時間の使い方を、渡邉さんに聞きます。
話し手:渡邉さん 聞き手:インタビュアー / PenBridge
コース制で、部活と受験勉強を両立する
インタビュアー: 学校は、どういう仕組みだったんですか?
渡邉さん: 成績や目標でコースが分かれていて、私は難関大学を目指す上位コースに入りながら、テニス部に所属していました。医学部などを目指す最上位のコースだけは、強豪指定の部活と両立できない決まりでしたが、それ以外は部活を本気でやりながら受験コースにいられるんです。
インタビュアー: 部活ガチ勢が受験コースにも入れる、というのが珍しいですね。
渡邉さん: そこがこの学校の良さだったと思います。
練習は、実質週7
インタビュアー: 練習はどのくらいあったんですか?
渡邉さん: 平日は放課後、土日は朝7時から夕方5時までです。月曜がオフのはずなんですけど、実際はほぼ毎週練習になって、実質週7でした。それを3週間続けて、ようやく1日オフ、という感じです。
インタビュアー: そのオフも、月曜ですよね。
渡邉さん: そうなんです。平日なので普通に授業があって、夕方から友達とご飯に行けるくらい。本当にオフがない生活でした。
それでも学年1位を取れた理由
インタビュアー: その生活で、文系学年1位はどうやって実現したんですか?
渡邉さん: まとまった勉強時間は取れないので、授業と隙間時間の密度を上げるしかなかったです。高校でも、中学のときに見つけた「いつでも行っていい塾」に通い続けて、行ける日に寄って、わからないところだけ聞く。時間がないことが最初からわかっているぶん、逆に迷いはなかったですね。
インタビュアー: 時間の制約が、勉強のやり方を決めてくれた面もある。
渡邉さん: そう思います。ダラダラやる選択肢が、そもそもなかったので。
インターハイ団体優勝と、テレビ出演
インタビュアー: 競技のほうも、結果を出していますよね。
渡邉さん: 高2のときに、団体戦でインターハイ優勝しました。全国選抜という、もう一つの大きな団体戦の全国大会では準優勝です。
インタビュアー: 全国の頂点ですね。
渡邉さん: 優勝したご縁で、チームでテレビ番組の企画に出演したこともあります。いい思い出です。
「文武両道」の本音
インタビュアー: 振り返って、両立できていたと思いますか?
渡邉さん: 成績と結果だけを見ればそうなんですけど、本音を言うと、テニスと勉強しかできない生活でした。他にやりたいことがあっても、時間が全くない。だから「大学では、テニス以外のこともやりたい」という気持ちがどんどん強くなっていきました。それが結果的に、進路選びに大きく影響しています。
PenBridge編集部より
学年1位は、気合いの産物ではありませんでした。支えは二つあり、どちらも仕組みの話です。
一つは、入学前に決まっていました。受験コースに籍を置いたまま強豪部活に入れる学校を、渡邉さんは高校選びの段階で選んでいます。もう一つは、決まった時間に通わなくていい塾と、隙間時間の使い方です。まとまった時間が取れないと最初からわかっていれば、勉強のやり方はおのずと絞られます。「逆に迷いはなかった」という本人の言葉は、強がりではなく、迷う余地を先に消してあったという意味でしょう。
ただ、この3年間が残したものは、成績と優勝の実績だけではありません。時間が全くない生活への反動として、「大学ではテニス以外のこともやりたい」という気持ちが育っていました。この気持ちがのちに、ほぼ確実だった指定校推薦を手放させることになります。
