塾高の推薦入試は、高木さんの言葉を借りれば、一芸を強みにした自己推薦のような入試です。自分の活動を書類にまとめて出願し、書類審査に通ると、面接と作文に進む。学力試験はありません。
ただ、出願する前に、越えなければいけない条件がありました。中学3年次の9教科の評定合計が38以上であることです。成績のつけ方が厳しい中学校に通っていた高木さんは、中3のとき、ちょうど38の前後をうろうろしていました。
連載第3回は、推薦入試の出願までの話です。
話し手:高木さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
塾高の中では「AO」と呼ばれていた
インタビュアー: 塾高の推薦入試は、どんな入試なんですか?
高木さん: 自分の一芸を強みにして、志願書などを書いて出願する入試です。自己推薦みたいなもので、塾高の中では「AO」と呼んでいました。出願するには中学校の評定の条件があって、僕の年は、集団討論と個人面接、それにその場で書く作文で合否が決まりました。
インタビュアー: どんな人が受けるんですか?
高木さん: ほとんどはスポーツです。野球、サッカー、珍しいところだとトランポリンとか。中でも野球部はかなり多いです。一芸なので、スポーツ以外の人もいて、数学オリンピックや物理オリンピックに出ていた人もいました。
インタビュアー: 募集は何人くらいですか?
高木さん: 40人くらいです。
評定38の前後を、うろうろしていた
インタビュアー: 評定の条件は、どれくらいなんですか?
高木さん: 9教科の合計で38以上です。中学校によっては、それほど高いハードルではないのかもしれないですけど、僕の中学校は本当に成績のつけ方が厳しくて。周りには勉強のできる子も多かったので。中3のとき、僕はちょうど38の前後をうろうろしていました。
インタビュアー: 38に届かないと……。
高木さん: そもそも受けられなくなります。それで、母に塾に入れられました。中学校のすぐ近くにあって、生徒のほとんどが僕の中学校の子という、ほぼ専門の塾です。期末試験の対策もしてくれるところでした。
インタビュアー: テニスとは、どう両立したんですか?
高木さん: テニスを週5日に減らして、塾を週2日。4か月くらい通って、無事に38が取れました。
塾長が塾高の出身で、作文も見てくれた
高木さん: その塾の塾長が、塾高の出身だったんです。一般入試で入った人で、現代文の先生でもありました。僕が慶應に行きたいとずっと言っていたのを見てくれていて、「じゃあ作文も見ます」と。
インタビュアー: 評定が取れたあとも、ですか?
高木さん: はい。成績を取り終わったあとも、特例のような形で見てもらっていました。
インタビュアー: 作文の練習の話は、次回くわしく聞かせてください。
みんな「文武両道」と書く
インタビュアー: 出願書類で、大事だったと思うことは何ですか?
高木さん: 塾高の推薦を受ける人は、みんな「文武両道」と書くんです。スポーツをしたくて慶應に行きたい人たちなので、当たり前に。その中で、どう差をつけるかを考えなきゃいけない。
インタビュアー: 高木さんは、どう差をつけたんですか?
高木さん: 変にこねくり回すより、自分がやってきたことを、そのまま書きました。中学受験をして国立の中学校に入って、勉強を続けながら、テニスでは全国大会で準優勝した。みんなが文武両道と言う中で、自分はそれを本当に高いレベルで実際にやってきた、ということを強く出しました。
インタビュアー: 大事なのは、盛らないこと?
高木さん: 盛らないことです。まっすぐ書くことだと思います。
PenBridge編集部より
高木さんの話で押さえておきたいのは、評定38が、受けられるかどうかを分ける条件だという点です。2027年度の推薦入学試験要項では、日本の中学校に在籍している場合、出願時点で中学3年次の9教科の成績合計が5段階評価で38以上であることが、出願資格の一つになっています。学校のQ&Aによれば、38に届かない場合の個別の考慮はありません。評定のつけ方は中学校によって違うので、高木さんの中学校のように、38が簡単ではない学校もあります。中2までの成績を見て、中3で38に届きそうかを早めに確かめておくと、あわてずに済みます。
出願資格には、中学校時代に運動・文化芸術活動などで相応の成果を上げていることも入っています。どの大会で何位以上、といった具体的な基準はなく、学校は、自分で「この分野で活躍した」と自信を持って言える志願者を待っている、と説明しています(塾高Q&A)。出願書類は、本人が志願理由を書く入学志願書、中学入学後の活動を年月日順に書く活動記録報告書と成果を客観的に証明する書類、保護者による志願者紹介文と、指導者など志願者をよく知る人による志願者紹介文(どちらも400字以内)などです。高木さんの「盛らずに、まっすぐ」は、こうした書類で、実際にやってきたことを事実のまま示す、ということでもあります。
2026年度の推薦入試は、出願121名、第1次選考(書類審査)の合格60名、最終的な合格41名でした。次回は、第2次選考の作文と面接、そして高木さんの年にはあった集団討論の話です。
