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入試方式・制度

「みんな、文武両道と書くんです」。評定38の壁を越えて、高木さんが塾高の推薦入試に出願するまで

塾高の推薦入試には、中3の9教科の評定合計が38以上という出願資格があります。成績のつけ方が厳しい中学校で38の前後をうろうろしていた高木さんは、中3で4か月だけ塾に通いました。出願する人がみんな「文武両道」と書く志願書で、何を書いたのかも聞きます。

2026.10.30慶應義塾高等学校
朝の光が差す電車内で、足元にテニスのラケットバッグを置き、膝の上の教科書を読む男子中学生の後ろ姿を描いた和紙コラージュ風のイラスト

塾高の推薦入試は、高木さんの言葉を借りれば、一芸を強みにした自己推薦のような入試です。自分の活動を書類にまとめて出願し、書類審査に通ると、面接と作文に進む。学力試験はありません。

ただ、出願する前に、越えなければいけない条件がありました。中学3年次の9教科の評定合計が38以上であることです。成績のつけ方が厳しい中学校に通っていた高木さんは、中3のとき、ちょうど38の前後をうろうろしていました。

連載第3回は、推薦入試の出願までの話です。

話し手:高木さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge

塾高の中では「AO」と呼ばれていた

インタビュアー: 塾高の推薦入試は、どんな入試なんですか?

高木さん: 自分の一芸を強みにして、志願書などを書いて出願する入試です。自己推薦みたいなもので、塾高の中では「AO」と呼んでいました。出願するには中学校の評定の条件があって、僕の年は、集団討論と個人面接、それにその場で書く作文で合否が決まりました。

インタビュアー: どんな人が受けるんですか?

高木さん: ほとんどはスポーツです。野球、サッカー、珍しいところだとトランポリンとか。中でも野球部はかなり多いです。一芸なので、スポーツ以外の人もいて、数学オリンピックや物理オリンピックに出ていた人もいました。

インタビュアー: 募集は何人くらいですか?

高木さん: 40人くらいです。

評定38の前後を、うろうろしていた

インタビュアー: 評定の条件は、どれくらいなんですか?

高木さん: 9教科の合計で38以上です。中学校によっては、それほど高いハードルではないのかもしれないですけど、僕の中学校は本当に成績のつけ方が厳しくて。周りには勉強のできる子も多かったので。中3のとき、僕はちょうど38の前後をうろうろしていました。

インタビュアー: 38に届かないと……。

高木さん: そもそも受けられなくなります。それで、母に塾に入れられました。中学校のすぐ近くにあって、生徒のほとんどが僕の中学校の子という、ほぼ専門の塾です。期末試験の対策もしてくれるところでした。

インタビュアー: テニスとは、どう両立したんですか?

高木さん: テニスを週5日に減らして、塾を週2日。4か月くらい通って、無事に38が取れました。

塾長が塾高の出身で、作文も見てくれた

高木さん: その塾の塾長が、塾高の出身だったんです。一般入試で入った人で、現代文の先生でもありました。僕が慶應に行きたいとずっと言っていたのを見てくれていて、「じゃあ作文も見ます」と。

インタビュアー: 評定が取れたあとも、ですか?

高木さん: はい。成績を取り終わったあとも、特例のような形で見てもらっていました。

インタビュアー: 作文の練習の話は、次回くわしく聞かせてください。

みんな「文武両道」と書く

インタビュアー: 出願書類で、大事だったと思うことは何ですか?

高木さん: 塾高の推薦を受ける人は、みんな「文武両道」と書くんです。スポーツをしたくて慶應に行きたい人たちなので、当たり前に。その中で、どう差をつけるかを考えなきゃいけない。

インタビュアー: 高木さんは、どう差をつけたんですか?

高木さん: 変にこねくり回すより、自分がやってきたことを、そのまま書きました。中学受験をして国立の中学校に入って、勉強を続けながら、テニスでは全国大会で準優勝した。みんなが文武両道と言う中で、自分はそれを本当に高いレベルで実際にやってきた、ということを強く出しました。

インタビュアー: 大事なのは、盛らないこと?

高木さん: 盛らないことです。まっすぐ書くことだと思います。

PenBridge編集部より

高木さんの話で押さえておきたいのは、評定38が、受けられるかどうかを分ける条件だという点です。2027年度の推薦入学試験要項では、日本の中学校に在籍している場合、出願時点で中学3年次の9教科の成績合計が5段階評価で38以上であることが、出願資格の一つになっています。学校のQ&Aによれば、38に届かない場合の個別の考慮はありません。評定のつけ方は中学校によって違うので、高木さんの中学校のように、38が簡単ではない学校もあります。中2までの成績を見て、中3で38に届きそうかを早めに確かめておくと、あわてずに済みます。

出願資格には、中学校時代に運動・文化芸術活動などで相応の成果を上げていることも入っています。どの大会で何位以上、といった具体的な基準はなく、学校は、自分で「この分野で活躍した」と自信を持って言える志願者を待っている、と説明しています(塾高Q&A)。出願書類は、本人が志願理由を書く入学志願書、中学入学後の活動を年月日順に書く活動記録報告書と成果を客観的に証明する書類、保護者による志願者紹介文と、指導者など志願者をよく知る人による志願者紹介文(どちらも400字以内)などです。高木さんの「盛らずに、まっすぐ」は、こうした書類で、実際にやってきたことを事実のまま示す、ということでもあります。

2026年度の推薦入試は、出願121名、第1次選考(書類審査)の合格60名、最終的な合格41名でした。次回は、第2次選考の作文と面接、そして高木さんの年にはあった集団討論の話です。

連載記事

高木さんインタビュー

第1回

「中1で、塾高テニス部の練習に参加したんです」。テニスも勉強も続けたかった高木さんが、慶應義塾高校を選ぶまで

小学生のころからテニス中心の生活を送り、中学受験は塾に通わずに国立大学の附属中学校へ。高木さんは中1のときに、もう塾高テニス部の練習に参加していました。推薦入試で慶應義塾高校に入るまでの連載第1回は、塾高を選んだ理由を聞きます。

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第2回

「ゲーム機もスマホもなかったことに、感謝しかないです」。週6日のテニスと片道1時間半の通学で、高木さんが評定を取り続けた中学時代

朝6時半に起きて、片道1時間半の電車で通学。放課後はテニススクールに向かい、帰宅は夜10時半。高木さんは中3の夏まで週6日のテニスを続けながら、成績のつけ方が厳しい国立大学の附属中学校で評定を取り続けました。勉強の時間はどこにあったのか、家庭のルールとあわせて聞きます。

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第3回表示中

「みんな、文武両道と書くんです」。評定38の壁を越えて、高木さんが塾高の推薦入試に出願するまで

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第4回

「この議論は、やめましょう」。集団討論で流れを変えた高木さんに聞く、塾高の推薦入試の作文と面接

第2次選考は、作文、集団討論、個人面接の3つ。作文のお題は「あなたを漢字一字で表すと」、集団討論のテーマは「大人と子どもの違い」でした。議論が薄くなりかけたところで流れを変えた高木さんに、当日の様子と準備、翌年からなくなった集団討論の話を聞きます。

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第5回

「塾高との相性は、5段階で3です」。それでも、もう一度選ぶなら塾高。高木さんが語る、クラスより部活の男子校

塾高が自分に合っていたかを5段階で聞くと、高木さんの答えは「3」でした。1学年18クラスの男子校で、人間関係はクラスより部活単位。それでも、もう一度受験するなら塾高を選ぶといいます。塾高生の特徴や、部活に入らない場合の過ごし方も聞きます。

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第6回

「受験に追われずに、高3の夏まで部活をやり切れました」。大学受験のない塾高で、高木さんが過ごした3年間

塾高に入ってよかったと思ったのは、受験に追われずに高3の夏まで部活をやり切れたこと。インターハイで3位に入り、10月の国体にも出場しました。その一方で、大学まで見えていると勉強のやる気は出にくい。「毎年1クラス分」と言われていた留年の話と、今も続くテニスの話を聞きます。

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