慶應義塾志木高等学校(以下、志木高)は、埼玉県志木市にある慶應義塾の男子校です。中学校を持たないので、生徒の多くは高校受験で入学します。2027年度の募集人数は、一般入試・帰国生入試が約180名、自己推薦入試が約50名です。一般入試の一次試験は国語・数学・英語の3科目で、小論文はありません。一次試験に合格すると、二次試験で面接を受けます。
今回話を聞いたのは、公立中学から志木高に進み、現在は慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)に通う溝手さん(仮名)です。小学2年から6年までは海外で暮らし、現地のインターナショナルスクールに通っていました。高校受験のときは、社会が苦手で国語の漢字にも不安があった一方、英語には自信があったといいます。志木高を選んだ理由と、部活を続けながらの受験勉強を聞きました。
話し手:溝手さん(仮名) 聞き手:インタビュアー / PenBridge
小学校の5年間は、海外のインターナショナルスクールで
インタビュアー: 海外では、どんな学校に通っていたんですか?
溝手さん: インターナショナルスクールです。いろいろな国の人がいて、みんな英語で話していました。イギリス系の学校で、テーマに沿って学んでいく国際的なカリキュラム(国際バカロレアの小学校向けのもの)で勉強していました。
インタビュアー: 日本に戻ってきたのは、いつですか?
溝手さん: 小6です。向こうの小学校を夏に卒業して、2学期から日本の小学校に入ったので、小学校を2回卒業したんです(笑)。
中学受験はせず、地元の公立中学へ
インタビュアー: 中学受験は考えなかったんですか?
溝手さん: 母は少し迷っていたみたいです。でも、両親とも受験にこだわるほうではなくて、普通に公立に行ってほしいという考えでした。自分も、受験で求められる国語の力が足りていなかったですし。帰国生の枠がある学校もいくつか見てみたんですけど、結局受けませんでした。
中2で塾へ。情報系に進みたい気持ちは、小学生のころから
インタビュアー: 高校受験を意識しはじめたのは、いつごろですか?
溝手さん: 中2くらいから塾に通いはじめました。母がほかのお母さんに勧められたのがきっかけです(笑)。
インタビュアー: そのころ、行きたい高校はあったんですか?
溝手さん: 小学生のころから情報系が好きで、そういう道に進みたいとずっと思っていました。理工系の大学に行きたかったので、理工系の国立大学の附属高校も、最後まで候補に入れていました。
大学受験を考えて、付属校を選んだ
インタビュアー: 慶應の付属校を考えたのは、どうしてですか?
溝手さん: 大学の入試では、推薦や総合型の枠が増えていて、一般入試はどんどん狭き門になると言われていました。自分は面接も小論文も得意ではないので、大学受験でそういう入試を受けるより、高校から付属に入ったほうが確実だと思ったんです。
インタビュアー: 理工系の附属高校のほうは、どうだったんですか?
溝手さん: そこは入学してから成績で学科が分かれるので、情報系の学科に進めるかは分かりませんでした。それもあって、大学まで続く付属校のほうがいいかなと。
塾高、志木高、早稲田の付属を比べて
インタビュアー: 慶應の高校は、どこを考えていたんですか?
溝手さん: SFC高等部は、高校からだと帰国生か、首都圏の外に住んでいる人しか入れないんです。なので、慶應なら塾高か志木高でした。早稲田の付属もいくつか考えていました。
インタビュアー: 塾高は受けなかったんですか?
溝手さん: 文化祭に行ってみて、クラスの数が多い大きな学校だなと思いました。中学から上がってくる人も多いので、高校から入る自分には、志木高のほうが合いそうだと思って。試験の日程の都合もあって、塾高は受けていません。
インタビュアー: 志木高の決め手は、何だったんですか?
溝手さん: 自然が多くて、ほとんどの人が高校から入ってくることです。あとは生徒の雰囲気ですね。志木は個性的な人が多いと大学でも言われていて、そこが自分に合っていると思いました。
3科目で、小論文のない入試
インタビュアー: 高校受験の科目は、どうなっているんですか?
溝手さん: 都立や国立の高校は、国語・数学・英語・理科・社会の5科目です。早慶の付属や私立は、国語・数学・英語の3科目のところが多いです。自分は社会が本当に苦手で、模試の偏差値が20台のこともあったので(笑)、3科目の入試は助かりました。
インタビュアー: 国語はどうでしたか?
溝手さん: 漢字はずっと苦手でした。でも、文法や読解では、そこまで困らなかったんです。受験の国語は、筆者の考えを読み取って書くような問題が多くて、話すための語彙とは違うので。小論文がある学校だと難しかったと思いますけど、志木は小論文がないので、受けられると思ったんです。
英語で点を取って、国語をカバーする
インタビュアー: 英語は、やはり得意だったんですか?
溝手さん: 小学校で身につけた英語が、そのまま使えました。志木の一次試験は3科目の合計で決まるので、英語で大きく点を取れれば、ほかの科目で取らなきゃいけない点は少なくて済むんです。国語が苦手でも、英語と数学でカバーできると考えていました。
インタビュアー: 塾の英語の授業は、どうでしたか?
溝手さん: 塾でも英語はやっていました。文法を学び直すという意味で、勉強になったところもあります。ただ最後は、もともとの英語の力に助けられました。
インタビュアー: 数学は?
溝手さん: 早慶を目指す人の中で、偏差値55くらいでした。そこそこできる、という感じです。
部活を続けながら、週4日の塾
インタビュアー: 受験勉強は、どんなふうに進めたんですか?
溝手さん: 本格的に始めたのは中2の後半で、週4日くらい塾に通いました。中学では部活に力を入れていて、中3の12月までコンクールに出ていたので、周りと比べると両立は大変でした。
インタビュアー: 塾では、どんな授業があったんですか?
溝手さん: 土日には、志望校や学力ごとにクラスを分けた特訓の授業がありました。早慶の付属の過去問をしっかり分析した教材で、実際の過去問に近い問題が多かったです。早慶の付属の入試には、中学の範囲を超えた問題も出るので、学校の勉強だけでは足りないと思います。
インタビュアー: 家では、どう勉強していましたか?
溝手さん: 塾の宿題をひたすらやって、塾に行って、の繰り返しでした。
親に言われたのは「宿題やりなさい」だけ
インタビュアー: ご両親は、受験にどう関わっていたんですか?
溝手さん: ほとんど口を出しませんでした。言われたのは「宿題やりなさい」くらいで、学校も好きなところに行けばいい、という感じでした。
インタビュアー: 振り返ってみて、それはよかったですか?
溝手さん: 「この学校に絶対入りなさい」と言われていたら、嫌だったかもしれないです。
入ってみた志木高は、実験とレポートの学校
インタビュアー: 入学してみて、志木高はどんな学校でしたか?
溝手さん: 大学の付属なので、受験とは関係のない学習に時間をかけます。特に化学は本格的で、1年生は全員、大学の理工学部の1・2年生がやるような実験をして、レポートを書きます。小論文が苦手で志木を選んだのに、入ってみたらレポートだらけでした(笑)。
インタビュアー: 学年が上がると、どうなるんですか?
溝手さん: 2年生で、理科を物理・化学にするか、生物・化学にするかを選びます。3年生になると、自由科目を5つ選べます。理工学部や医学部に進みたい人は、取らなきゃいけない科目が決まっています。
インタビュアー: 授業以外では、どう過ごしていましたか?
溝手さん: 授業は土曜日もあって、週6日です。部活はパソコンを使う部活に入って、プログラミングをしていました。そのときの仲間とは、大学でも同じサークルです。3年生のときは、秋の収穫祭で実行委員として動画の編集を担当しました。
インタビュアー: 通っている人は、どのあたりから来ているんですか?
溝手さん: 半分くらいは埼玉の人ですね。
大学はSFCへ
インタビュアー: 大学は、SFCに進んだんですよね。
溝手さん: はい。入る前はよく分かっていなかったんですけど、好きなプログラミングにじっくり取り組めるので、入ってみたら自分にとても合っていました。
PenBridge編集部より
溝手さんが志木高を選んだのは、入試の形が自分の得意と苦手に合っていたからでした。社会のない3科目の入試で、小論文もありません。そのうえで、得意な英語で点を取り、苦手な国語をほかの科目で補う、という考え方で受けています。志木高の一般入試の一次試験は、国語・数学・英語が100点ずつで、科目ごとの足切りはありません。得意な科目で点を取って苦手を補う受け方が、そのまま成り立つ入試です。
もう一つは、帰国の時期です。溝手さんは5年間、海外のインターナショナルスクールで学びましたが、帰国したのが小学生のときだったので、帰国生入試の対象にはなりませんでした。帰国生入試の資格は、学校ごとに、いつ・どれだけ海外の学校にいたかで決まります。対象にならない場合でも、身につけた英語は一般入試の英語で生かせます。
ご両親は受験にほとんど口を出さず、言われたのは「宿題やりなさい」くらいだったそうです。溝手さんは、「この学校に絶対入りなさい」と言われていたら嫌だったかもしれない、と振り返っています。
2027年度の志木高の入試日程や科目、入試の結果は、志木高の受験対策ページにまとめています。
